銀河鉄道の夜 宮沢賢治

 

一、午後の授業

 

★配役(右の数字はセリフの数)

1先生=5

2ナレーションA=4

3ナレーションB & ジョバンニ=3

4ナレーションC=3

 

 

1先生「では皆さんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものが本当は何かご承知ですか?」

2A「先生は、大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、皆に問いかけました」

3B「カンパネルラが手をあげました。それから四、五人が手をあげました。ジョバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました」

4C「確かにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろジョバンニは本を読む時間も読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした」

1先生「ジョバンニさん、あなたはわかっているのでしょう?」

2A「ジョバンニはいきおいよく立ちあがりましたが、はっきりとそれを答えることができないのでした。ザネリが前の席から振り返って、ジョバンニを見てクスっと笑いました」

1先生「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると、銀河は大体何でしょう?」

3B「黙っているジョバンニを見て、先生は困った様子でしたが、カンパネルラを見て、『ではカンパネルラさん』と指しました。するとあんなに元気に手をあげたカンパネルラが答えませんでした」

4C「先生は意外なようにしばらくじっとカンパネルラを見ていましたが、『では。よし』と言いながら、自分で星図を指しました」

1先生「このぼんやりと白い銀河を大きな良い望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう?」

2A「ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。そして目の中に涙がいっぱいになりました」

3ジョバンニ「そうだ、僕は知っていたんだ。もちろんカンパネルラも知っている。それはいつか、カンパネルラと一緒に読んだ雑誌の中に書いてあったんだ。それをカンパネルラが忘れるはずがない。すぐに返事をしなかったのはきっと、このごろ僕が仕事がつらく、学校に来ても皆と元気よく遊ばず、カンパネルラともあまり話をしなくなったので、カンパネルラがそれを気の毒がってわざと返事をしなかったからに違いない・・・」

4C「ジョバンニはそう考えるとたまらなく、自分もカンパネルラもあわれなような気がするのでした。先生はまた言いました」

1先生「もしもこの銀河帯が本当に川だと考えるなら、その中にある一つ一つの小さな星は、その川の砂や砂利の粒にあたるわけです。つまり私どもは天の川(あまのがわ)の中に住んでいるわけです。では今日はここまで。今夜は銀河のお祭ですから、皆さんは外へ出てよく空をご覧なさい」

2A「そしてはしばらく机のフタを開けたり閉めたり、本を重ねたりする音がいっぱいでしたが、まもなく皆はきちんと立って礼をすると教室を出ました」